大型特殊教習記・プロローグ

 大型二輪免許を7月に取った。
4年前に原付教習で初めてスクーターに乗り、その加速に震え上がっていた私がよくここまで登りつめられたものである。
 バイクが好きになったのは、運動オンチの私がスポーツの得意な人と同じように走れたことに感激したから。ただそれだけである。(「バイクとの出会い」参照)
 そして、身長の低さだけを理由に「君には中型二輪は向いていない」と言われながらも、中型(普通)二輪免許を取った。
 さらに、やはり身長の低さだけを理由に「君は苦労すると思う。だから補習を50時間つけるよ」と言われたものの、9時間の補習で大型二輪免許を取った。
 私にとって、大型二輪免許は単に二輪車なら排気量無制限に乗れるという資格ではない。自分を差別する連中を見返した証なのである。だから、今は大型二輪に乗れなくていい。大型二輪に乗れる資格と実力を持っているという事実があるから。
 そして、その事実は今までの中の人生でいくら努力しても報われなかったものがあまりにも多い(体育だけではない)という事実を少しは埋めてくれるだろう。

 さて、現時点で自動車学校で取れる免許のなかで取っていないのは、大型、大型特殊、けん引の3種類である。
 せっかくここまで免許を取ったのだから、いっそのこと自動車学校で取れる免許を全て取ってしまおうと思うようになった。いろいろな車を操作できるという事実が欲しいのである。

 免許は大型二輪免許を取ったS自動車学校で取ることにした。大型二輪の時に入校金を払ったので6カ月以内に他の免許を取るときにそれが免除になるのである。
 この中で手始めに取ろうと思ったのは大型特殊免許である。なぜなら、大型免許は教習時間が22時間もあって10万円以上かかるので今はダメ。けん引免許はS自動車学校ではやっていないのである。

1997年9月5日

 S自動車学校に2カ月ぶりに行って、大型特殊教習の入校申し込みをした。申し込みの時には特に変な顔をされなかった。「どうして」とも言われなかった。まぁ、教習が始まったら指導員に聞かれるだろう、「どうして大型特殊を取ろうと思ったの」って。そんなときどう答えればいいのだろうか。上に書いたことを言ったっておそらく分かってはくれまい。「大型二輪を取ったときに、自動車学校で取れる免許を全て取ってみたくなったから」とでも答えるのがいちばん無難だろう。
 最後に、大型特殊の教習車はマニュアルかオートマか聞いた。受け付けの人によると、「ほとんどオートマ」とのこと。詳しく聞くと、変速は3段だが、クラッチペダルはないとのこと。つまり、手動変速のオートマチック車、セミオートマということである。
 これを聞いて安心した。マニュアル車には1年以上乗っていないので、クラッチ操作の感覚を忘れているのだ。バイクだったら、絶対に四輪にまねできないようなとんでもない早さでシフトできるのだが・・・。

 この後、適性検査と教習原簿に貼る写真の撮影のために、3階の教室に行った。そこでは学科教習をしていた。教習をしていた指導員は、見たことある指導員だった。彼は大型二輪教習の時に私を思いっきり感情的になって怒鳴りつけた指導員だった。写真撮影の前に彼に話しかけられた「今度は何を取りに来た」と。「ちっ、覚えていやがったか」と思いつつも、私は「大型特殊です」と答えた。彼が大型特殊の指導員だったら間違いなくひどい目に遭うな。と思った。


大型特殊教習記・第1段階

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最終更新日1999年2月25日