「大型自動二輪免許が教習所で取得可能に」
という、新聞記事の見出しが1996年の9月頃に出たことを覚えている人がどれくらいいるだろうか?
 バイクに興味のない人にとっては、どうでもいいことであろう。
一方、バイク乗りにとってはこれは大ニュースである。
 一体なぜか?
 それを述べる前に、自動二輪免許の区分を以下に示す。
 
自動二輪免許区分(1975年〜1996年8月)
免許名 運転可能な自動二輪車
自動二輪免許 全ての自動二輪車
自動二輪免許・中型限定 排気量400cc以下の自動二輪車
自動二輪免許・小型限定 排気量125cc以下の自動二輪車
 

 いずれの免許も満16歳以上で取得することができる。
 中型限定と小型限定の自動二輪免許は公認自動車学校で教習を受けて、全ての過程を終えた後に行われる卒業検定に合格すれば、免許センターでの技能試験が免除される卒業証明書をもらうことができる。(この卒業証明書を発行できるこの自動車学校を「公認自動車学校」という)あとは、適性検査と学科試験(普通車の免許を持っている人はこれも免除)を受けて合格すれば、免許を手にすることができる。
また、教習所に通わずに、免許センターで技能試験を受けることもできる。
 なお、限定なしの自動二輪免許は自動車学校で取ることができない。
つまり、免許センターで技能試験を受けるしか方法がないのである。
なお、この限定なしの免許を取ることを「限定解除する」という。

 問題なのは、この試験が異常に難しいことである。一時は「司法試験並に難しい」、「東大に入るよりも難しい」、「10回20回の受験は当たり前」などと言われた時代があった。(当時の人の単なる冗談かもしれないが、こんな冗談を言いたくなるほど難しかったことは想像に難くない)
 だから限定解除は大半のバイク乗りの憧れなのである。
そんなわけで、1975年以降に自動二輪の免許を取った人の多くは中型限定免許しか持っていないのである。
 ちなみに、私の知る限りでは、75年以降に限定解除を取った人は新潟国際情報大学では2人しかいない。
 
 なぜそんなに限定解除が難しい(難しくした)のか?
 1975年までは自動二輪免許には限定はなかった。
当時の自動二輪の技能試験は125ccのバイクで行われていた(採点もそんなに厳しくなかったらしい)のだ。
そんな試験に合格するだけで、750ccだろうがハーレーだろうが乗れたのである。
 
 その結果どうなったか?
 二輪車の事故が増えてしまった。当たり前だ。それだけではなく、暴走族が750ccで暴走しまくって、社会問題にまでなったのである。
 
 1975年、このため、行政側は二輪免許制度の改正を行った。
それが前述した制度である。これにより自動二輪免許(特に限定解除)を取りにくくして(大型二輪免許を教習所で取らせない)、事故を減らし、暴走族による被害を減らそうとしたのである。
 
 しかしながら、事故も暴走族も減らなかった。これは、400ccのバイクの高性能化と、暴走族が400ccに乗り換えて(あるいは、無免許で大型を乗り続けて。彼らにとって免許取り消しなんて痛くもかゆくもない)暴走行為を続けたからである。
 
 まともなライダーにとっては迷惑な話である。大型バイクに憧れている人にとっては、この免許制度は大きな障害である。しかし、頑迷な行政当局はこの制度を頑なに守り続けた。ライダー達の願いは無視された。
 
 そして、20年の歳月が虚しく過ぎて1995年になったとき、状況が変わり始めた。
 アメリカが「日本で外国製の大型バイク(アメリカのハーレーを指していることは間違いないであろう)が売れないのは、日本の免許制度が厳しすぎるからだ。これは貿易障壁だ。日本は免許制度を緩和すべきだ。」と主張し始めたのだ。
 しかし、この主張は筋が通らない。外国でバイクを売りたいのなら、その国の実状(たとえどんなに不合理な規制がまかり通っていても)に合わせた物を売るようにするべきだ。こんなことは、企業のマーケティングの問題である。
 
 このあとの行政側の対応は早かった。
行政側は、1996年の9月に大型自動二輪免許を教習所で取得できるように法改正する方向に動いたのである。
 多くのライダー達の願いをもってしても変えることができなかったことが、ある国の一言で簡単に変わってしまうとは・・・。
 
 私は、法が改正されたことについてはうれしく思うが、アメリカに感謝する気は毛頭ない。
 なぜなら、アメリカは哀れな日本のライダーを救おうとしたのではなく、自らの政治的目的(対日輸出の増加)を達成するために日本に政治的圧力をかけたのだから。
 
 しかし、1996年の9月に教習ができるようになったわけではない。
行政側が一定の条件を付けたからである。
 
 その条件とは、大型自動二輪教習の公認を受けたい自動車学校は、その自動車学校で教習生に大型自動二輪の練習をさせた後、免許センターで限定解除試験を受けさせて、その自動車学校出身者の合格率が95%を越えること、である。
 
 そして、1997年3月現在、大型自動二輪の公認を受けた自動車学校は約90校である。なお新潟県では14校が公認済。これは全国一である。
 ちなみに、私の地元の自動車学校では、教習費用5万円(超格安!)で100時間の大型自動二輪教習後、試験を受けに行かせたそうである。
 また、この教習を受ける資格を厳しく制限したという話を未確認であるが聞いたことがある。
 まぁ、当然でしょうね。自動車学校の命運がかかっているのだから。



 このようないきさつで免許制度が改正された現在、日本のバイクメーカーはこの制度改正に合わせて、大型バイクのラインナップを充実させている。
 ということは結果的に日本のバイクメーカーも、日本人ライダーも漁夫の利を得たことになる。
 このような状況になった今、アメリカは自らの政治的目的を達成できたと判断するのだろうか?

 なお、現在の免許制度は、
 
現在の自動二輪免許区分
免許名 運転可能な自動二輪車
大型自動二輪免許 全ての自動二輪車
普通自動二輪免許 排気量400cc以下の自動二輪車
普通自動二輪免許・小型限定 排気量125cc以下の自動二輪車

普通自動二輪免許は満16歳以上で取得できる。
大型自動二輪免許は満18歳以上で取得できる。
大型自動二輪免許の取得可能年齢が2歳引き上げられた。


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最終更新日1999年2月25日