バイクとの出会い

 私は高校に入るまで、原付バイクのことを他の多くの人が考えているように、「単に手軽な足代わりの乗り物」としか考えていなかった。そして、車の免許を取って車を買った日がバイクに乗らなくなる日になると思っていた。
私は自動二輪のことを自分とは全く関係のない乗り物だと思っていたし、自動二輪を趣味で乗っている人々を理解できなかったし、理解しようとすらしなかった。
その4年後に自ら好んで自動二輪を乗るようになるとは、あのとき誰に予測できたであろうか・・・。

 私が原付の免許を取ったのは、高校2年(17歳)の時である。
 取りたいと思ったのは、原付は自転車と違ってペダルをこがなくて済む楽な乗り物だと思ったからである。ただそれだけの理由でしかなかった。

 原付の免許を取るためには、自動車学校で原付教習を受けてから、免許センターで学科試験を受けなければならない。
 この講習が私のバイクに対する考えを一変させるとはこの時知る由もなかった。


 私は、地元の自動車学校の一室にいた。そこには原付講習の指導員となぜか警察官がいた。その指導員は私たちにこんな質問した。「今までに原付を無免許運転したことがある人は正直に手を挙げてください」

 手を挙げなかったのは私だけだった。

 その指導員は彼らではなく、私の方を見てこう言った。「あなた、自転車乗れる?」私は呆気にとられた。

 一通りの説明が終わったあと、私たちは2輪車専用コースに移動し、そこで原付講習を受けた。


 他の人たちにとっては、無免許運転をしたことがあるだけにこの講習は非常に楽だったようだ。
 私はというと、初めはまっすぐ走るだけでも苦労したが、だんだん慣れてきて講習が終わる頃には他のみんなと同じくらい走れるようになっていた。
 これは私にとってはものすごい驚きだった。私は運動神経が鈍く体育が非常に苦手である。つまり運動したことを体に覚えさせるのが苦手なのである。一方、他の人のほとんどが体育の得意な人たちである。(他の受講生の人と私は同じ中学だったのでそのことを知っていた)バイクに関しては運動神経がいい人たちと同等のことができるようになったのである。しかもわずか2時間くらいで。これで何とも思わないわけはない。

 私は、こんな体験をさせてくれたバイクに感謝した。そしてバイクが好きになった。

 これが、バイクにハマったきっかけである。

 もし、私が人並みかそれ以上の運動神経を持っていたらきっとバイクに乗っていないだろう。人並みにバイクに乗れても、それは当たり前のことだ。そう思っていたに違いない。バイクに対して特別な思いを抱くこともなかっただろう。


 私が免許を取ったのはその2カ月後の8月6日。もちろん学科は一発で合格した。
 こうして、私とバイクとの長い付き合いが始まった・・・



 

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